工場建設で取り入れたい暑さ対策とは? | 工場建設パーフェクトガイド
工場建設の情報
工場建設で取り入れたい暑さ対策とは?
公開日:2024.06.26 更新日:2024.06.26
工場や倉庫内の高温化は深刻な問題であり、特に夏季には室温が40℃から50℃に達することがあります。これは建物の構造や周囲環境が影響しています。金属製の折板屋根は熱を通しやすく、空調効果が限られます。また、老朽化や外気の流入も問題です。
このような工場では熱中症による体調不良などが懸念されます。労働環境を改善するためには断熱・遮熱、冷却装置の導入が推奨されます。これにより従業員の健康と生産性が向上し、離職率の低下や電気代の節約にもつながります。
目次
工場や倉庫が暑くなる理由
工場や倉庫内の温度は暑くなりやすく、特に夏場は室温による深刻な問題が発生するケースも少なくありません。なぜ、工場や倉庫は暑くなるのか、暑さによる深刻な事例も交えて解説します。
◇工場や倉庫が暑くなる理由
工場・倉庫内は暑くなりやすく、真夏では40℃〜50℃まで上昇するケースも多いです。ここまで室温が上昇する理由は、工場や倉庫の建物の構造や工場・倉庫の周辺環境にあります。
まず、工場や倉庫は金属製の折板屋根でつくられており、熱を通しやすく放射熱を発するため空調設備も効きづらい構造です。さらにコンテナやトラックが出入りするため、外気が入り込みやすくなっています。
また、建物や設備自体が老朽化しているケースも少なくない上、工場や倉庫の周辺は建物が密集していないため、直射日光を浴びやすいのも原因のひとつです。
◇深刻な事例も発生
熱中症は誰もがなるリスクを抱えています。特に工場や倉庫内で働く製造業や運送業は、業務中の熱中症による死亡件数が全体の中でもトップ3に数えられるほどです。過去に工場内で熱中症による死亡事例があり、給湯器製造工場で給湯のタンク漏れの検査中に発生しました。
事故が起きた工場は、切妻屋根になっており棟高5m、壁面・屋根はスレート葺構造で出入口が東側に1ヶ所、西側に2ヶ所設置された構造です。東側と西側には引き戸式のガラス窓が設置され、扇風機が3基設置されていました。
被災者は普段通り業務を行っていましたが、終業間際に水槽近くで倒れているのを発見され救急搬送されたものの、2週間後に熱中症による多臓器不全で死亡しています。このように熱中症による工場や倉庫内での事故を防ぐためにも熱中症対策は非常に重要です。
暑さによる悪影響
工場や倉庫内の室温による弊害は熱中症だけではありません。暑さによる悪影響はさまざまあります。
◇生産効率の低下
まず、暑さにより起こる可能性が高いのが業務の効率低下です。暑さで体調を崩すケースも多く、体調不良で従業員が欠勤または早退した場合、人手不足に陥り作業に遅れが出る可能性があります。
また、暑さは従業員の健康に害を及ぼすだけでなく集中力の散漫につながり、作業ミスが増え生産量に影響を及ぼすリスクも高まります。
◇労災事故の発生
工場や倉庫は、フォークリフトや溶解炉、回転式装置など製造機械・装置が常に稼働しています。そのため熱が篭もりやすく、工場や倉庫内の温度を上げてしまい、脱水症状や熱中症を発症しやすくなります。
脱水状態が続くと、意識が薄れてしまい事故につながる恐れが高まります。結果、労災事故が起きてしまうケースも少なくありません。このような労災事故を防止するためにも熱中症防止の対策が求められます。
建設時に取り入れたい暑さ対策
工場や倉庫内での暑さによる事故を防ぐためにも対策が必要です。有効な暑さ対策として次の3つが挙げられます。
◇断熱・遮熱
断熱・遮熱効果のあるシートや塗料を使用する方法です。空調設備を増設する、リフォームするなどの方法は有効ですが同時にコストがかかります。遮熱シートや塗料を使用する方法であれば、コストを抑えた暑さ対策が可能です。
遮熱塗料は、太陽光に含まれている赤外線を反射する特性を持っており、吸収する熱量を軽減します。ただし、シートや塗料は効果が永続するわけではないため、張り替えや塗装のし直しが必要です。そのため、ランニングコストがかかる点がデメリットといえます。
◇冷却装置
屋根用スプリンクラーやスポットクーラーなどの冷却装置を導入する方法です。屋根用スプリンクラーとは、屋根の上で水を噴射し蒸発させる方法で屋根と周辺の温度を下げる効果があります。
スポットクーラーは局所的に温度を下げる装置です。通常のエアコンは固定されていますが、スポットクーラーは固定されておらず移動もできます。従業員が多く集まるラインに設置して熱中症などの予防が可能です。
◇空気の循環装置
大型扇風機の導入も暑さ対策になります。扇風機といっても家庭用のものより羽が大きく回転するため、暑さ対策として導入する企業も多いです。大型扇風機は、排熱が発生しない上使用電力も少ないためランニングコストも抑えられます。
また、大型扇風機は風を当てて涼むというより、空気の循環をよくする効果があるのが特徴です。そのため、エアコンとの相性が抜群でエアコンと組み合わせて使用することで工場や倉庫内を涼しくできます。
ただし、大型扇風機は埃が舞いやすいため、製造物に埃が侵入するため注意が必要です。
暑さ対策で働きやすい環境を
暑さ対策は、現場で働く人間の健康を守るだけでなく生産性の向上も見込めます。工場建設をする場合は、しっかりとした暑さ対策が重要です。
◇従業員満足度が向上
暑さ対策は、従業員の満足度の向上にもつながります。工場や倉庫で働く方々にとって工場や倉庫内の暑さは深刻な問題です。工場や倉庫の中には、空調設備が十分でないケースも多く、脱水症状や熱中症を発症しやすい環境のため、暑さを理由に離職するケースも少なくありません。
また、暑いと集中力が散漫になりミスが増える、モチベーションが低下するといったデメリットもあります。こうした従業員の離職やミス防止・モチベーション低下を防ぐためにも空調設備の導入や断熱・遮熱効果のある塗料の使用などが必要不可欠です。
◇電気代の節約
暑さ対策でミストファンなどの空調設備を導入した企業が、電気代を月40万円ほど削減できた事例もあります。電気代を削減できる理由として、暑さ対策を徹底している場合は過度に冷房などの温度を下げる必要がなくなるためです。
また、近年の設備は省エネ対策も行われていることも電気代削減に影響しています。
工場や倉庫内の高温化は、特に夏季には深刻な課題となります。建物の構造や周囲環境が要因となり、金属製の折板屋根は熱を放射しやすく、空調効果が制限されることがあります。さらに、建物の老朽化や外気の流入も温度上昇を促進します。
特に製造業や運送業では、業務中の熱中症による死亡事例が報告されており、これを防ぐための対策が急務です。熱中症対策の重要性は高まる一方であり、業務環境の改善は企業活動における不可欠な課題と言えます。
このような状況は従業員の健康リスクを高め、業務効率の低下にもつながりかねません。労働環境の改善策としては、断熱・遮熱効果のあるシートや塗料の導入が有効です。これにより建物内部の温度上昇を抑え、冷却装置の負荷を軽減できます。
また、屋根用スプリンクラーやスポットクーラーの設置も考慮すべきであり、局所的な熱の問題を効果的に解消します。さらに、大型扇風機を用いた空気の循環促進も有効です。
これらの対策は従業員の健康管理だけでなく、生産性の向上にも寄与し、企業の経済的なメリットとなります。