大規模成長投資補助金とは?採択率を高めるコツも紹介 | 工場建設パーフェクトガイド
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大規模成長投資補助金とは?採択率を高めるコツも紹介
公開日:2024.06.26 更新日:2024.06.29
大規模成長投資補助金は中小企業の賃上げと設備投資を支援する補助金で、工場新設や設備増設が対象です。目的は地域の雇用促進と企業成長で、特に給与総額を最低賃金の伸び率を上回る水準に引き上げます。補助申請には10億円以上の投資と事業計画書の提出が必要で、一次審査と二次審査を経て採択されます。競争が激しいため、審査基準の理解と計画書の精緻化が重要です。
目次
大規模成長投資補助金の効果的活用法
大規模成長投資補助金は正式には「中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」という名称の補助金です。以降は「大規模成長投資補助金」と表します。
具体的には、従業員への賃上げを実施した企業に対して補助金を出し、工場などの新設や大規模設備投資を支援する補助金です。工場建設や設備増設なども補助事業の対象となります。
◇補助金の目的
大規模成長投資補助金の目的は、地域の雇用を支える中堅・中小企業が持続的に従業員の給与を増やすことです。企業が成長するためには人材と設備への投資が必要ですが、これには多額の資金が必要です。
この補助金はその両方を支援し、最終的には従業員一人当たりの給与総額が地域の最低賃金の伸び率を上回る目標を達成することを目指しています。
◇補助金の概要
補助金を受けるためには、必要要件を満たし申請手続きを行う必要があります。補助対象者、補助上限額、補助事業の要件は、以下のとおりです。
・補助上限額:50億円(補助率1/3以内)
・補助対象者:
1.中堅・中小企業(常時使用する従業員数が2,000人以下の会社など)
※一定の要件を満たす中堅・中小企業は、共同申請(コンソーシアム形式)が可能
※みなし大企業および1次産業を主たる事業は対象外
・補助事業の要件:
1.投資額が10億円以上(専門家経費・外注費を除く補助対象経費分)
2.補助事業の終了後3年間の対象事業に関わる従業員などひとり当たり給与支給総額の年平均上昇率が、事業実施場所の都道府県における直近5年間の最低賃金の年平均上昇率以上
引用元:経済産業省「中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」
審査通過のポイント解説
大規模成長投資補助金は必要要件を満たし申請手続きをするだけでは、補助金は受けられません。一次審査と二次審査があり、応募者数が多くライバルが多いため、採択のハードルは高めだといえます。
◇一次審査と二次審査をパスしなければならない
補助金の審査は厳格で、次のステップがあります。
最初は 一次審査(書類審査) です。ここでは、35枚以内のパワーポイント形式の「成長投資計画書」を提出します。ビジネスフレームワーク(5フォース、4P、SWOT、PEST、PPM)を使い、収支計画を含む一貫したストーリーを作成する必要があります。審査の基準は、形式の適格性と計画の効果や実現可能性です。
次に 二次審査(プレゼンテーション審査) があります。ここでは、計画書の内容や効果、実現可能性などが外部の有識者によって評価されます。経営者がプレゼンテーションを行い、有識者との質疑応答に対応する必要があります。役員や事業責任者が補足説明をすることはできますが、外部支援者の参加は認められません。ただし、金融機関の確認書を提出する場合は、その担当者の参加が特例として認められ、加点の対象になります。
最後に 独自の基準 があります。経営力、先進性と成長性、地域への影響、投資の費用対効果、実現可能性などが定性的・定量的に評価されます。
◇ライバルが多い
通常の補助金や助成金と比較して補助金額が高額なため、応募者数が多いのも特徴です。2024年4月30日17時の1次公募締め切りまでに、736件の有効申請があったと公表されています。
ライバルが多いため、採択されるためにはポイントを押さえて審査に臨むことが大切です。
審査基準を満たす事業計画書の作成術
事業計画書を作成する際は、審査基準の項目を盛り込むことが重要です。また、加点をすべて取ることで、採択の可能性をさらに高められます。
◇事業計画書
経営力は、自社の将来の長期成長ビジョンが具体化され、高い売上成長率や売上増加額が示されていることが重要です。また、今後3~5年間の事業戦略が論理的に構築され、補助事業がその中で効果的に位置づけられていること、補助事業の売上が全体の売上に対して適切な水準であり、成果目標達成のための管理体制が整っていることも求められます。
先進性・成長性では、競合との差別化した計画が必要です。労働生産性の向上や人手不足の改善を目指す取り組み、持続的な売上アップと成長に寄与する投資が求められます。製品やサービスの付加価値向上や、人員の効率化などが加えられるとさらに効果的です。
地域への波及効果では、従業員ひとりあたりの給与額や雇用、取引額が地域経済に与える影響が評価されます。地域経済のリーダーシップを担い、地域企業との連携や共存を進める事業者であるかも重要なポイントです。コンソーシアム形式の場合は、参加者や地域企業に与える影響と相乗効果も考慮されます。
大規模投資・費用効果では、企業規模に見合った投資が求められます。費用対効果が高く、企業の行動変革や資源を活用した効果的な投資が高く評価されます。
最後に、実現可能性が重要です。補助事業を遂行できる能力があり、中長期的な課題や市場のニーズを検証し、財務状況やスケジュール管理に問題がないことが求められます。
◇加点はすべて取る
補助金の採択を勝ち取るためには、取れる加点をすべて確保することが重要です。まず、地域未来牽引企業に認定されることが挙げられます。次に、パートナーシップ構築宣言の登録企業であることが加点の条件です。最後に、金融機関による確認書を提出し、その金融機関の担当者がプレゼンテーション審査に同席することも加点の対象となります。
大規模成長投資補助金の申請に関するFAQ
大規模成長投資補助金の公式サイトでは、さまざまな疑問と回答がまとめられています。そのなかから4つの質疑応答を紹介します。
◇既存設備の移設費用は補助金の対象か
既存設備の移設費用は、運搬費と見なされるため、補助金の対象外です。
◇いつまでに工場の新設を終えればよいか
補助金の事業実施期間は、補助金の交付決定日から令和8年12月末までです。この期間内に、納品や検収、支払いなどの手続きを完了させる必要があります。補正予算の早期執行を考慮して、令和7年3月末までに設備の支払いや設置を前倒しする計画を策定することが推奨されます。
◇本社と子会社の両方で取得した資産は補助対象か
本社と子会社が連携して一体的な大規模投資を行う場合、共同申請(コンソーシアム形式)であれば、両社で取得した資産も補助金の対象となります。ただし、公募要領に記載されたコンソーシアムの要件を満たす必要があります。
◇物件の仮契約で支払った手付金は本補助金の対象か
補助金の交付決定後の補助事業期間内に締結された不動産の売買契約で支払った手付金は補助金の対象となります。ただし、事前に契約を結んで手付金を支払っていた場合は、補助金の対象外です。
大規模成長投資補助金は、中小企業が従業員の賃上げと設備投資を推進するための補助金です。補助対象となるのは、工場の新設や設備の増設など大規模な投資プロジェクトです。目的は地域の雇用促進と企業成長の促進であり、特に従業員一人当たりの給与総額を地域最低賃金の伸び率を上回る水準に引き上げることを目指しています。
補助金を受けるには一定の要件を満たし、事業計画書の提出が必要です。補助上限は50億円で、中堅・中小企業が対象とされます(ただし、一定条件下では共同申請も可能)。投資額は10億円以上で、補助事業後3年間の給与支給総額の増加率が審査基準となります。
申請は一次審査(書類審査)と二次審査(プレゼンテーション審査)を通過する必要があり、審査基準には経営力、先進性と成長性、地域への影響、費用対効果、実現可能性などが含まれます。加点対象としては、地域未来牽引企業の認定や金融機関の確認書提出が挙げられます。
この補助金は応募者数が多く競争が激しいため、事業計画書の構築と審査対策の徹底が求められます。また、既存設備の移設費用や事前に支払った手付金については、公募要領に基づく対象性の確認が重要です。