工場建設の基本設計で検討する内容と生産性を上げるレイアウトについて | 工場建設パーフェクトガイド
工場建設の流れ
工場建設の基本設計で検討する内容と生産性を上げるレイアウトについて
公開日:2024.03.28 更新日:2024.03.28
工場建設における成功は、基本設計の段階で決まります。基本設計では、工場の目的や設計方針を明確にし、建物の配置やレイアウト、設備の仕様などを検討します。また、生産性を向上させるためのレイアウト設計も欠かせません。効率的な動線や適切なスペース配置が生産性向上の鍵となります。そのため、基本設計からレイアウトまで、工場建設プロセス全体を見据えた計画が重要です。
目次
他の建築物と工場建設の違い
他の建築物と工場建設は、建物を建てるという点は同じですが、建物や工事の規模が全く異なります。工場建設の基本設計などと合わせて知っておくと、より工場建設への理解が深まります。他の建築物との違いは次の3つです。
◇規模の大きさ
工場建設は他の建築物と比較して規模が大きい特徴があります。これは、工場が通常、大量の生産ラインや機械設備を収容する必要があるためです。例えば、自動車工場や製造工場では、複数の製造ラインや大型の機械が配置されることが一般的です。そのため、工場の建物自体が非常に広大であり、屋内のスペースが他の建築物よりも広く確保される必要があります。
また、工場内の機械設備や生産ラインの配置にも十分なスペースが必要です。これらの設備はしばしば大型で複雑な構造を持ち、それぞれの機能や作業スペースに適切なスペースが必要とされます。さらに、工場では材料や製品の保管スペースも必要であり、これらのスペースも他の建築物よりも広大なものが求められます。
そのため、工場建設における設計や施工には、建物の大きさや機能性に関する専門的な知識が必要とされます。工場設計は建物だけでなく、生産ラインや機械設備の配置、作業効率の最適化なども考慮されるため、より複雑なプロセスが必要とされます。
◇動線の重要性
工場の設計ではゾーニングと動線計画というものがあります。まず、ゾーニングとは機能や用途ごとに空間を分けることです。一般住宅の場合はリビング・子ども部屋・寝室など、ゾーニングを行いますが、工場におけるゾーニングは一般住宅とは少々異なります。
また、人やモノが移動する経路を動線といいますが、その動線を適切に配置していくことを動線計画といい工場設計において重要な要素のひとつです。一般住宅などであれば、空いた空間にモノを配置すれば問題ありませんが、工場は違います。
工場の場合、薬品や食品など生産するものに影響が出ないように衛生面を徹底しなければなりません。そのため、細菌やホコリで汚染しないよう、クリーンルームや機械の動力源であるユーティリティ設備の動線を考慮した設計が必要です。
◇責任者の数
工場建設の特徴の一つは、関わる責任者の数が多いことです。工場では、生産ラインごとに責任者が配置されることが一般的です。このため、工場設計においては、それぞれの責任者や部署との打ち合わせが頻繁に行われます。
工場内の様々な機能や作業スペースを担当する責任者が複数存在するため、設計段階から各責任者の要望やニーズを考慮しなければなりません。そのため、工場建設プロジェクトでは、建築設計だけでなく、生産ラインや機械設備に詳しい専門家との連携が不可欠です。
基本設計とは?基本設計で決定する事項
工場建設では、最初に基本設計を行います。この基本設計は、工場で働く従業員の労働環境や工場の生産性を左右する重要な部分です。いざというときのためにも基本設計について知っておきましょう。
◇基本設計の目的と概要
工場建設の流れは、まず初めに明確な目的を設定することから始まります。工場が老朽化している、事業の拡大に伴う生産量の増加、既存の工場の課題解決など、なぜ新しい工場を建設する必要があるのかを明確にします。次に、建設会社の選定が重要です。
価格だけでなく、過去の実績や法令適合など信頼できる会社を選ぶ必要があります。そして、基本設計フェーズでは、目的に基づいて設計方針や基本設計を立案します。これには工場の構造やレイアウト、スタッフの動線設計などが含まれます。
既存の工場がある場合は、現在の状況を踏まえた設計が行われます。基本設計は工場の生産性や働きやすさを最大化するための重要な段階です。
◇基本設計で決定する事項
基本設計で決定する事項は以下の通りです。
配置・平面・立面・断面レイアウトの確定: 建物の配置や平面図、立面図、断面図などのレイアウトが決定されます。これによって建物の形状や外観、内部の配置が確定します。
各仕上げ・建具などの確定: 壁面や床の仕上げ、ドアや窓などの建具の種類や仕様が決定されます。これは建物のデザインや利便性に影響を与えます。
設備の仕様確定: 機械設備や電気設備、給排水設備などの仕様が確定されます。これによって工場の機能性や効率性が決まります。
必要な諸条件の確定: 建築に必要な諸条件や制約条件が確定されます。例えば、耐震性や防火性などの安全基準や、環境基準、衛生基準などが含まれます。
関係法令の確認: 建設する工場に関連する法令や規制が確認されます。建築基準法や消防法、労働安全衛生法など、関係する法令を遵守するための対策が取られます。
これらの事項が基本設計の段階で確定され、工場建設の具体的な計画が進行していきます。
工場のレイアウトとは?レイアウトが引き起こす問題
工場のレイアウトは、工場で働く従業員の作業効率や安全性に大きく関わってきます。工場は空間も広く、人や機械も多いためレイアウトを考える際は、レイアウトによるリスクや安全性への配慮も大切です。
◇工場建設におけるレイアウト
工場のレイアウトは、製品の製造を円滑に進めるための設備や施設の配置を指します。レイアウト設計が適切でないと、製造プロセスがスムーズに進まず、効率性が損なわれ生産性が低下します。したがって、工場の建設や改築を行う際には、レイアウト設計に重点を置くことが不可欠です。
具体的には、作業員がスムーズに作業できるように機器や設備を配置することが重要です。レイアウト設計では、作業効率を最大化するために無駄な移動や作業を減らすように機器や設備を配置します。これにより、生産性が向上し、効率的な製造が可能となります。
◇レイアウトが引き起こす問題
レイアウトが引き起こす問題のひとつは、従業員同士の接触事故です。十分な動線や通路の幅を確保できていない場合、作業中に従業員同士の接触にもつながりやすくなります。万が一、従業員同士または片方が道具を持っていたり機械を操作していた場合、非常に危険です。
また、棚や高さなどのレイアウトが適切でない場合は、出荷ミスや生産品の不良など業務や製品の品質に支障をきたすケースも少なくありません。このような事故やミスを防ぐためにも、工場のレイアウトを見直してしっかり考える必要があります。
工場建設の際レイアウトで失敗しないために
工場のレイアウトは、動線とスペースの2つが重要です。何をどのくらい生産するのか、機械・設備をどこに配置すると効率的なのか、明確にしてから2つのポイントを考慮して機械・設備の配置を決めましょう。
◇動線
工場は、動線を意識して設計するのが重要です。動線を考える際は、通路の安全性が重要となるため、通路の幅の確保と複数の動線が重複していないかを確認します。この2つは、従業員同士の接触を防ぐポイントでもあるため
また、生産性を高める対策として頻繁に使うエリア・設備・製品までの距離が適切であるか、考慮するのも大切です。
◇スペース
動線を確保した次は、スペースを確保する必要があります。まず従業員数と機器・設備を置けるスペースが確保できるか、工場の大きさを考慮しながらチェックしていくのが大切です。万が一スペースの確保ができなかった場合は、何を削れるのかも合わせて考慮しておきましょう。
削れるスペースがない場合は、工場のデッドスペースへの配置も視野に入れておくと後々調整しやすくなります。また、機械・設備のスペースを確保する際は、機械・設備の台数・可動域・振動・騒音・重量・安全性に注意しながらスペース確保するのがポイントです。
工場建設と他の建築物の違いは、規模の大きさ、動線の重要性、責任者の数です。工場建設は大規模であり、複数の生産ラインや機械設備を収容する必要があり、そのために広大なスペースが必要です。動線の設計は衛生面を考慮し、生産物に影響を与えないように配慮されます。
また、工場建設には多くの責任者が関わり、それぞれの要望やニーズを考慮する必要があります。工場建設の際には、基本設計が重要であり、建物の形状や設備の仕様、法令遵守などが確定されます。
工場のレイアウトは作業効率や安全性に大きく影響し、動線とスペースの確保が重要です。従業員の安全を考慮し、適切なレイアウト設計が必要です。