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工場建設や倉庫建設の耐震基準とは?耐震性能を高める方法も解説 | 工場建設パーフェクトガイド

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工場建設や倉庫建設の耐震基準とは?耐震性能を高める方法も解説

公開日:2024.02.22 更新日:2024.02.22

工場や倉庫などの建設における耐震基準は、地震による被害を最小限に抑えるための規制です。これらの施設では、耐震性を高めるために壁やブレースの追加、柱の補強などの方法が一般的に採用されます。建物の安定性を向上させるこれらの対策は、地震発生時の被害を軽減し、安全性を確保する重要な役割を果たします。

工場建設・倉庫建設で守るべき耐震基準とは

地震の多い日本において、建築物が地震に耐えることは極めて重要です。ここでは耐震基準に焦点を当て、その概要や過去と現在の基準の違いについて説明します。

◇そもそも耐震基準とは

耐震基準は、建物が地震に対してどれだけの耐性を持つ必要があるかを定めた規制や基準のことです。建築物や構造物は、地震の力によって倒壊したり損傷したりする可能性がありますが、適切な耐震基準に適合することでそのリスクを最小限に抑えることができます。

◇旧耐震基準の概要

旧耐震基準は、1990年代に使用されていた耐震性能の基準です。より具体的には、1950年から1981年までに申請および許認可された建物に適用されていた耐震性能の基準のことをいいます。

この基準では、中規模な地震である震度5程度の地震が発生しても、建物がほとんど損傷しないことを目指していました。しかし、実際には震度5を超える地震が頻繁に発生する日本では、この基準では安全性が確保されているとは言い難い状況でした。しかし新しい地震工学の発展や地震の被害からの学びを受けて、より厳格な新耐震基準が導入されました。

◇新耐震基準と旧基準との違い

新耐震基準は、1981年6月に施行された耐震基準のことです。新耐震基準は、1978年の宮城県沖地震による建物の倒壊被害を受けて制定されました。この地震で多くの建物が倒壊し、多くの犠牲者が出たことから、建築物の耐震性を向上させる必要性が強調されました。その結果、より厳しい基準が策定されました。

新耐震基準と旧耐震基準の大きな違いは、地震の規模に対する耐性の違いにあります。旧耐震基準では、震度5程度の中規模な地震で損壊しないことが要求されました。一方、新耐震基準では、より強力な震度6強から7の大規模な地震に耐え、建物が倒壊しないことが要求されています。

耐震診断が求められる工場・倉庫とは

画像出典先:フォトAC

いくつかの要件に当てはまる建築物は、厳格な耐震診断が求められます。以下では、耐震診断が求められる工場・倉庫について解説します。

◇特定既存耐震不適格建築物

特定既存耐震不適格建築物は、耐震診断などによってその耐震性が不適格であると認定された建築物のことです。これらの建物は、地震などの自然災害による被害が大きくなる可能性が高く、建物の倒壊や人命の危険性が高まります。そのため、耐震補強や改修が必要とされます。特定既存耐震不適格建築物に該当する要件は以下の通りです:

・階数が3階以上であり、かつ床面積が1,000㎡以上の倉庫・工場

これは、広い面積を持ち、かつ多階建ての倉庫や工場が該当します。大きな床面積と高い建物は地震時に大きな揺れを受け、倒壊の危険性が高まります。

・政令で規定されている数量以上の危険物を貯蔵または処理する建築物全般

危険物とは、火災や爆発の危険性がある化学物質や爆発物などを指します。これらの物質を貯蔵または処理する建物は、地震などの自然災害によって危険が増幅され、周囲への影響も大きくなります。

以上が特定既存耐震不適格建築物の概要と該当要件です。これらの建物は、地震やその他の災害によるリスクが高まるため、適切な対策や補強が必要とされます。

◇指示対象となる特定既存耐震不適格建築物

指示対象となる特定既存耐震不適格建築物は、行政機関が耐震改修の必要性を指摘し、改修を指示した建築物のことです。行政から指示を受けた事業主や建築物管理者は、指示に従って耐震改修を行うことが求められます。また改修を怠った場合、その旨が公表され、社会に周知されることもあります。

危険物を貯蔵もしくは処理する工場の場合、500㎡以上の面積を有する工場が特定既存耐震不適格建築物の対象となります。

◇耐震診断義務付け対象建築物

耐震診断義務付け対象建築物は、耐震診断制度に基づき、その耐震性能の確認が義務付けられた建築物のことです。具体的には以下のような建築物が耐震診断の対象となります。

・階数が3階以上であり、かつ床面積が5,000㎡以上の倉庫・工場

この条件に該当する建築物は、広い面積を持ち、かつ多階建ての倉庫や工場です。広大な床面積と高い建物は地震時に大きな揺れを受け、耐震性能の確認が必要です。

・階数が1階以上であり、かつ床面積が5,000㎡以上の倉庫・工場で、かつ建物が敷地境界線から一定距離以内に位置するもの

この条件に該当する建築物は、広い面積を持ちつつも、敷地境界線に近接して建っている倉庫や工場です。周囲の建物や構造物との関係から、地震時の振動や揺れの影響を受けやすいため、耐震性能の確認が必要とされます。

これらの建築物は、その特性から地震による影響が大きく、倒壊や崩壊のリスクが高まる可能性があります。そのため、耐震性能を確認し、必要に応じて耐震補強などの対策を講じることが重要です。

倉庫の耐震性能を高めるための具体的方法

倉庫の建設、または工場建設において耐震性能を高める方法はさまざまです。ここでは倉庫の耐震性能を高めるための主な方法をご紹介します。

◇壁を増やして補強

壁を増やすことは、建物の耐震性を向上させる一般的な方法です。壁を増やすことで、地震時に建物の荷重を支え、建物の安定性を高めることができます。例えば、コンクリート製の壁や鉄骨製の壁を追加することが効果的です。特に、地震の影響を受けやすい部分や構造の弱い部分に壁を追加することで、建物全体の耐震性を向上させることができます。

◇ブレースの増加

ブレースの増加により倉庫の耐震性を高めることは、鉄骨造の倉庫や工場でよく採用される耐震補強手法の一つです。ブレースとは、筋交いとも呼ばれ、建物の柱や梁で囲まれた四辺形の軸組の対角線上に配置される補強材です。

この方法では、既存の工場や倉庫の柱や梁に囲まれた面に斜めに鉄骨ブレースを追加し、接合します。そして、鉄骨ブレースと既存建物の間にモルタルやコンクリートを充填して接合を強化します。このようにして、建物の構造体を補強し、耐震性を向上させます。

ブレースの追加により、建物は水平方向からの力により強化されます。地震などの自然災害が発生した際に、建物が横揺れや変形を受けるのを防ぎ、安定性を確保します。特に、鉄骨造の倉庫や工場など、大規模な建物では、ブレースの増加が重要な耐震補強手法の一つとされています。

◇柱の補強を実施する

柱の補強も、倉庫の耐震性を高める効果的な方法です。柱の補強により、柱が地震時の力により変形しにくくなり、建物全体の安定性が向上します。柱の補強の主な方法としては、以下の3つが挙げられます。

鋼製補強

柱に鋼材を追加して補強します。これにより、柱の耐荷重性や耐震性が向上します。

コンクリートの増し打ち

既存の柱にコンクリートを追加して、柱を補強します。これにより、柱の耐震性や耐荷重性が向上します。

炭素繊維による補強工法

炭素繊維強化プラスチックを使用して柱を包み、耐震性を向上させます。


日本における建築物の耐震基準は、地震による被害を最小限に抑えるための重要な規制です。過去の耐震基準から現在のものへの変遷は、地震工学の発展や過去の地震災害からの教訓を踏まえています。

旧基準では震度5程度の地震に耐えることが求められていましたが、新基準ではより強力な地震にも耐える必要があります。特に工場や倉庫などの特定建築物では、耐震診断が必要とされ、広い面積や危険物の貯蔵がある場合は厳格な要件が課されます。

耐震補強の具体的な方法としては、壁やブレースの追加、柱の補強などがあります。これらの対策は建物の安定性を向上させ、地震時の被害を軽減する役割を果たします。地震多発国である日本においては、建築物の耐震性向上は極めて重要な課題であり、規制や基準の遵守は社会全体の安全確保につながります。

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