食品工場の建設に関連する法律とは?補助金や建設時の注意点も解説 | 工場建設パーフェクトガイド
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食品工場の建設に関連する法律とは?補助金や建設時の注意点も解説
公開日:2024.02.21 更新日:2024.02.21
食品工場を建設する際には、食品リサイクル法や水質汚濁防止法、都市計画法などの法的規制を順守する必要があります。さらに、補助金制度を活用することで建設費用を削減できます。工場建設時には衛生管理や設備の選定など、様々な注意点があります。これらを組み合わせることで、安全かつ効率的な食品工場の建設が可能となります。
目次
食品工場の建設に関連する法律の代表例
食品工場を設計し建設する際は、複数の法律を遵守する必要があります。その代表的な法律は、食品リサイクル法、水質汚濁防止法、都市計画法の3つです。
◇食品リサイクル法
食品産業における食品循環資源再利用の促進を目的とし、制定された法律です。外食、製造、卸売などの事業者に対し、売れ残った食品や製造過程で発生する食品廃棄物の削減を義務付けていて、これらの食品廃棄物を飼料や肥料の原材料として再利用することを規定しています。
食品廃棄物等多量発生事業者(前年度に食品廃棄物の量が100トン以上の事業者)は、主務大臣に対し毎年6月までに食品廃棄物の発生量や食品循環資源の再利用に関する報告をしなくてはいけません。
◇水質汚濁防止法
水質汚濁とは、人為的な活動が原因で、河川、公共の水域、沿岸海域などが汚れることです。日本でも、かつて水質汚濁が原因で「イタイイタイ病」や「水俣病」などの公害病が発生した暗い過去があります。
水質汚濁防止法は、その名のとおり水質を保護し水質汚濁を防ぐための法律です。工場などから排出される水質汚濁物質は、種類ごとに排水基準が設けられており、水質汚濁防止法が指定する「特定施設」では、河川への排水に厳しい制限があります。
◇都市計画法
都市の健全な発展と秩序ある整備することにより、国土の均衡ある発展と公共の福祉を増進させることを目的として制定された法律です。都市計画の内容や決定手続き、都市計画制限、都市計画事業など、都市計画に関連する重要な事項も定められています。
都市計画法は建築基準法と密接に関連していて、ふたつの法律が都市における建築を規制しています。工場を建設する際は、建ぺい率、容積率などは都市計画法、前面道路幅員の制限は建築基準法に従います。
準拠する法令と並行し補助金制度を活用する
画像出典先:フォトAC
工場建設には法律に準拠しなくてはいけませんが、それと同時に条件を満たせば利用できる補助金制度もあります。食品工場の建設で活用できる主な補助金制度は、ものづくり補助金、HACCPハード事業、米粉商品開発等支援対策事業、国産原材料調達安定化事業の4つです。補助金制度を活用すれば、工場の建設費用を安く抑えられます。
◇ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者向けの補助金制度です。この補助金を利用すると、革新的な製品やサービスを開発し、生産プロセスやサービス提供方法を改善するためのシステムや設備の導入費用が支援されます。
補助金の対象は主に設備投資で、一般型では最大1,000万円、グローバル展開型では最大3,000万円まで補助されます。補助率は中小企業が投資額の半分、小規模企業・小規模事業者および低感染リスク型ビジネス枠が2/3となっています。
◇HACCPハード事業
農林水産省が指揮を取って実施している補助金制度で、食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業のことです。HACCP対象設備、建築の他、HACCP取得に必要なコンサルティング費用、認証後の人材の育成費用も補助の対象となります。補助率は1/2、補助額(上限)は5億円です。募集期間は2022年3月13日 ~ 2023年 4月13日で既に終了していますが、再度同じような補助金制度が開始される可能性もあるため、資料を見て概要を把握しておくことをおすすめします。
◇米粉商品開発等支援対策事業
米粉商品の開発の経費、広告宣伝費、設備投資、原材料費などを対象とした補助金制度です。補助率は1/2、補助額(上限)は2億円です。
◇国産原材料調達安定化事業
輸入原材料の価格高騰に悩む食品メーカーを支援するための補助金です。補助金を活用することで、輸入原材料に依存するリスクを軽減し、商品の品質と生産効率を改善できます。補助率は1/2、補助額(上限)は2億円です。
食品工場の建設を計画する際に注意すべき点
食品工場は異物が混入したり、食中毒が発生したりする可能性があるため、衛生管理が必要不可欠です。レイアウトによって衛生管理のしやすさが左右されます。食品工場の建設を計画する際に注意すべき点は、汚染を発生させない工夫、サニテーション動線を確保、設備面での配慮の3つです。
◇工場内汚染を発生させない工夫
工場内では従業員や製品が移動することで交差汚染が起きる可能性があるため、工場内汚染を防ぐための対策と工夫が必要です。まず、工場内を清潔区域と汚染区域に分けます。汚染区域では、入荷室や出荷室などの開口部を遮断する対策が必要です。その一つがドックシェルターです。
ドックシェルターはトラックと入出荷口の隙間を埋める気密装置で、風雨や虫、ほこりの侵入を防ぎます。また、エアーカーテンやオーバースライダー、高速シャッターなども利用されます。これらの装置は、開口部を遮断することで外部からの汚染空気や異物の侵入を防ぎ、食品製造時の衛生管理を向上させます。
特に高速シャッターは、フォークリフトなどの運搬作業が頻繁に行われる場所で効果を発揮し、作業効率の向上と安全性の確保に貢献します。また、エントランスを生産ラインの従業員、オフィス部門の従業員、来客で分け、接触と交差が少ないレイアウトにすれば、工場内汚染が発生するリスクを軽減できます。
◇サニテーション動線を確保する
サニテーションは、食品工場内の衛生を保つため行う殺菌や洗浄などのことです。通常、食品工場では従業員は「出勤 → 作業服に着替える → 汚れを落とす →生産エリア」という順序で移動するため、レイアウトを決めるときはサニテーション動線を確保することも重要です。サニテーション動線を確保すれば、消毒をせずに生産エリアに入ったり、消毒後に汚染区域を通過したりすることを防止できます。
◇設備面での配慮も必要
設備の機能性を向上させることで、衛生管理がしやすくなります。食品工場にあると便利な設備は、次のとおりです。
自動開閉ドア・自動水栓
トイレや作業場の出入り口に自動開閉ドア、蛇口に自動水栓があると、直接触れることがなくなり、設備を清潔に保て接触感染も防げます。
埋込式照明・カバー付き照明・自動清掃機能付き空調
工場内のホコリが舞うのを防ぐのに役立ちます。必要に応じて、専門業者に設備の掃除やメンテナンスを依頼することも大切です。
フィルター付き換気扇
フィルター付き換気扇は、外部から害虫やネズミが侵入するのを防ぐのに有効です。
密閉容器
食品工場では清潔な環境を保つためには、ゴミ置き場は生産エリアから遠い場所に配置し、ゴミは密閉容器に捨てるなどの対策を行います。
食品工場建設には法的規制があり、食品リサイクル法や水質汚濁防止法、都市計画法などが代表的です。これらの法律を遵守するだけでなく、補助金制度も活用できます。工場建設時の重要なポイントは、工場内汚染を防ぐ工夫、サニテーション動線の確保、設備面での配慮です。
例えば、汚染防止のために工場内を清潔区域と汚染区域に分け、高速シャッターやドックシェルターなどの設備を導入することが挙げられます。また、サニテーション動線を確保することで、衛生管理を効果的に行い、食品安全を確保します。
さらに、自動開閉ドアや埋込式照明などの設備を活用することで、清潔な環境を維持しやすくなります。これらの対策は食品工場の衛生管理を強化し、品質の向上と安全性の確保につながります。