危険物保管庫とは?建設時の基準と守るべき法令を紹介 | 工場建設パーフェクトガイド
工場建設の情報
危険物保管庫とは?建設時の基準と守るべき法令を紹介
公開日:2023.11.30 更新日:2023.11.30
危険物保管庫は、安全性の確保が不可欠な危険物の保管施設であり、これを建設するには厳格な基準と法令の遵守が求められます。消防法において指定された危険物の保管が主な目的となり、その建設に際しては建築基準法、都市計画法、消防法などが規制を定め、厳格な要件を課しています。以下では、危険物保管庫の概要と、建設時に守るべき基準と法令について紹介します。
目次
危険物保管庫とは?保管できる物を紹介
危険物保管庫は危険物倉庫のことで、保管できる物は消防法で指定されている危険物です。こちらでは、危険物倉庫の特徴と、危険物倉庫で保管できる危険物をご紹介いたします。
◇危険物倉庫とは?
危険物は発火や引火するおそれがあるため、安全な場所に保管する必要があります。危険物を安全に保管する施設が、危険物倉庫です。危険物倉庫を建設する際は、建築基準法、都市計画法、消防法などが定める規制に従わなくてはいけません。危険物倉庫は火災にリスクがあるため、これらの法律では、設置場所、構造、設備など細かい基準が定められています。危険物倉庫を建設する際は、建設工事を開始する前に、管轄する消防署での申請手続きが必要です。
◇保管できる物一覧
消防法が指定する危険物は6種類あり、それぞれの危険物の特性は次のとおりです。
・第1類酸化性固体
他の物質を酸化させたり、可燃物に混ざると爆発および発火したりおそれがあります。
・第2類可燃性固体
低温でも引火しやすく、火災が発生すると着火したり、粉塵爆発を起こしたりする特性があります。燃焼するスピードが速いため、消火も困難です。
・第3類自然発火性物質および禁水性物質
空気または水に触れると、発火したり可燃性ガスを発生したりします。
・第4類引火性液体
静電気が原因で引火することがあります。水に溶けないので、注水による消火を行う際は注意しなくてはいけません。
・第5類自己反応性物質
自己燃焼し、燃焼スピードも速いため取り扱いに注意が必要です。
・第6類酸化性液体酸化性液体
単独で燃焼することはなく、水などに反応して燃焼します。
◇条件付きで普通の倉庫でも危険物は保管できる
例えば、家庭で使用する灯油は引火性液体に部類される危険物ですが、灯油を危険物倉庫に保管している人はほぼいません。その理由は、危険物でも条件を満たせば、普通の倉庫でも保管できるからです。消防法では指定数量を定めていて、所有する危険物が指定数量の1/5未満であれば、普通の倉庫で保管できます。指定数量は危険物の種類によって違うため、確認が必要です。
危険物保管庫建設時の守るべき基準
消防法では、工場建設時や危険物倉庫建設時に守るべき基準を定めています。こちらでは、危険物倉庫建設時の大まかな手順と、消防法で定められている基準についてご説明いたします。
◇危険物倉庫の建設までの手順
大まかな手順は、次のとおりです。
消防機関との協議
危険物倉庫を建設する地域の消防機関と連絡を取り、建設計画を共有し協議を行います。消防機関は建設に関する安全規制や指針を提供し、必要な条件を説明します。
設置許可の申請手続き
地元の行政機関や関連機関に危険物倉庫の設置許可を申請します。許可申請には建設計画、施設の設計図、危険物の種類と数量、安全対策などの詳細情報が含まれます。
設置許可証の受け取り
許可申請が承認されると、設置許可証を受け取ります。この証明書は危険物倉庫の建設を合法的に行うために必要です。
建設工事の開始
許可を受けた後、建設工事を開始します。建設プロセスは、設計図に従って進行し、安全規制に従います。
中間検査
建設工事の途中で、消防機関や他の関連機関からの中間検査が行われることがあります。これにより、安全基準への適合が確認されます。
完成検査の申請
建設が完了したら、完成検査を申請します。この申請には、倉庫の完成図面や安全対策の詳細が含まれます。
完成検査証の受け取り
完成検査が合格すると、完成検査証を受け取ります。この証明書は、危険物倉庫が安全に運用できることを示します。
これらの手順を順守し、危険物倉庫の建設を合法的かつ安全に行うことが重要です。また、地域の法律や規制に合わせて手順を調整することが必要です。
◇危険物倉庫法令で定められている基準
消防法では、危険物倉庫を設置する位置、建物の構造や規模、設備などに細かい基準があります。消防法で定められている主な内容は、次のとおりです。
設置する位置
住宅や病院、学校などを避けて、保安対象物から適切な保全距離を保てる位置を選ぶ
発火した際に、延焼を防ぎ消化がしやすいように、必要に応じて空き地を確保する
規模・構造・設備の基準
平屋で高さは6m未満にする
床面積が1,000㎡以下にする
原則として屋根材には軽量の不燃材料を採用し、軽い不燃材でふき、天井は作らない
梁と階段は不燃材を採用する
壁はと柱は耐火構造にする
液体の危険物を保管する場合は、床に浸透しない構造にし、適度に傾斜をつけ貯留設備を設置する
危険物倉庫であることが分かる標識、防火に関する掲示板を設置する
採光設計にして照明をつける
消火設備を備える
指定数量が10倍以上の危険物を保管する場合は避雷設備を設ける
危険物保管庫建設時に必要な届出と法令
危険物倉庫や危険物保管庫を建設する際は、届出と複数の法令に従う必要があります。最後に、危険物保管庫建設時に必要な届出と法令について解説いたします。
◇危険物保管庫建設時の届出
建設する前に「危険物製造所、貯蔵所、取扱所設置(変更)許可」、完成後に「危険物製造所、貯蔵所、取扱所完成検査」の申請手続きが必要です。申請手続きは、管轄する消防機関で行います。
◇危険物保管庫建設時に必要な法令
必要な法令と規制内容は次のとおりです。
建築基準法
危険物保管庫を設置できる場所を、工業地域と工業専用地域に限定しています。少量であれば準工業地域、火薬・石油・ガスが少量の場合は第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域に建設が可能ですが、事前に確認が必要です。
消防法
危険物の定義と指定数量を定めています。指定数量未満の危険物保管や取り扱いは火災予防条例、細かい規制は危険物の規制に関する政令で定めています。
都市計画法
土地を利用する目的に応じて住宅地、商業地、工業地など13種類に区分していますが、具体的な規則を定めているのは建築基準法など他の法令です。
港湾法
臨港地区には建築基準法が適用されず、港湾法にもとづいた条例によって建設できる建築物が指定されています。例えば、大阪市では商港区、修景厚生港区、マリーナ港区に危険物保管庫は建設できません。(少量であれば可能)
火災予防条例
危険物の保管および取り扱いにおける技術上の基準が定められています。
危険物の規制に関する法令
消防法の委任を受け、実施することを目的とし、定められた危険物に関する規定のことです。
危険物倉庫は危険物を安全に保管するための施設ですが、火災のリスクはゼロではありません。そのため、危険物倉庫の管理は、しっかりと行う必要があります。
危険物倉庫の管理者は、危険物の特性を理解し、適切な管理方法を身につける必要があります。また、危険物倉庫の定期点検や清掃を実施し、火災のリスクを低減することが重要です。
危険物保管庫は、危険物を安全に保管するための施設であり、その建設には厳格な規制と手順が存在します。危険物倉庫で保管できる物は、消防法によって指定された6つの危険物の類型に分けられます。これらの危険物は、発火や爆発のリスクを持つため、特別な施設が必要とされます。
危険物倉庫には指定数量以上の危険物を保管する場合、特に厳格な要件があり、避雷設備の設置が必要です。一方、指定数量未満の危険物は普通の倉庫でも保管可能ですが、規模や安全対策を確保する必要があります。
消防法に基づく危険物倉庫の基準は、設置場所、建物の構造、設備、安全対策などに関する詳細なガイドラインを提供しています。これらの基準を厳守し、法的手続きを遵守することが不可欠です。