工場建設をゼネコンに依頼する場合の注意点と押さえておきたいポイント | 工場建設パーフェクトガイド
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工場建設をゼネコンに依頼する場合の注意点と押さえておきたいポイント
公開日:2023.08.25 更新日:2023.08.31
工場建設は、企業の成長や発展に欠かせない重要なプロジェクトです。このような重要なプロジェクトを成功に導くためには、経験豊かな建設会社やゼネコンに依頼することが欠かせません。本記事では、工場建設をゼネコンに依頼する際の注意点や押さえておきたいポイントを解説します。
目次
建設会社とゼネコンの違いは?
建設業界において、「建設会社」と「ゼネコン(ゼネラル・コンストラクター)」という言葉はよく耳にするものですが、これらの違いは意外と知られていません。しかし、建設会社とゼネコンは、業務範囲や規模でみると異なる特性を持っています。
建設会社とゼネコンの主な違いは、業務の範囲と規模です。建設会社は主に「設計」と「施工」に特化していますが、ゼネコンは「設計」「施工」「研究開発」の3機能を一手に担います。また、建設会社は戸建てなど比較的小規模の工事をメインで行うのに対し、ゼネコンは大規模なプロジェクトを手がける傾向があります。
ゼネコンが手がける工事の代表例として「土木工事」と「建築工事」が挙げられます。土木工事とは、道路や橋・トンネル・ダム・河川堤防・海岸防潮堤などの社会基盤を整備する工事です。建築工事とは、商業施設・物流施設・官公庁舎・オフィスビル・学校・ホテル・マンションなどの建物を建てる工事です。いずれも、多数の下請け業者を統括する役割をゼネコンが果たします。
国内には、スーパーゼネコンと呼ばれる大手5社(鹿島建設、清水建設、大成建設、大林組、竹中工務店)があり、これらは日本の建設業界において非常に影響力があります。その他、特定の分野に特化したゼネコンも存在します。例えば、海洋土木工事に強い「マリコン」や、道路舗装に特化したゼネコンなどがあります。いずれも「設計」「施工」「研究」といった3つの分野を自社で担います。
このように建設会社とゼネコンは、取り扱う工事案件が全く異なるのです。工場建設時は、自社が想定する建設規模に合わせて選ぶと良いでしょう。
工場建設でゼネコン選びに失敗しないためのポイント
このようにゼネコン選びでつまずくと、プロジェクトの規模が大きいだけに経営計画にまで影響が及びかねません。
工場建設でゼネコン選びに失敗しないためには、「基本計画」をしっかりと立てることが不可欠です。工場建設プロジェクトには計画・設計・施工の3段階がありますが、最も重要な工程は「基本計画」です。プロジェクトの成功は計画完了時で50%、設計完了時で80%決まるとも言われており、計画が不十分だと後戻りのリスクが高まります。
工場建設時にありがちな失敗は「工事完了(竣工)の期限を先に決めてしまい、計画に十分な時間をかけずに進めてしまう」というケースです。しかし、新工場には通常、特定の目的やコンセプトがあり、それを適切に反映するためには基本計画に時間・労力を十分投資する必要があります。
なお、基本計画に取り組む際は、依頼主自身が主体となることが理想です。ゼネコン業者と一緒に基本計画を立てる場合、依頼主の意図や想いが十分に反映されるわけではありません。そのため、基本計画をゼネコン業者に丸投げせず、まず社内でしっかり作成して、それをゼネコン業者に明確に伝えましょう。
工場建設は実績のある会社に依頼しよう
工場建設においては、ただ建物を作るだけではなく、稼働時の生産性向上が最重要課題です。生産性の高い工場建設を行うには、以下5つのポイントを押さえることが重要です。
1つ目に、計画段階で「余裕を持った空間の確保」が必要です。
余裕を持った空間設計は、将来的な拡張や変更に柔軟に対応できるという大きなメリットがあります。例えば、新しい製造ラインを追加する際や、既存の機械をアップグレードする場合、スペースが確保されていれば迅速に対応できます。これにより、ダウンタイムが抑えられ、市場の変化や技術進化に素早く適応することが可能となります。工場稼働時は、市場ニーズや経営環境の変化に素早く適応することが求められるため、余裕を持った空間設計は必須といえます。
2つ目に、「丈夫な土間の仕様」も大切です。
土間、つまり工場の床面は、工場内での作業の基盤となる部分です。ここが弱いと、設置する機械や設備、さらには作業員自身にもリスクが及びます。特に、重量物の機械や設備を設置する場合、土間の強度が不足していると、床面が沈下したり、最悪の場合、機械が倒れる可能性もあります。反対に土間がしっかりしていると、機械が不安定になることで起こる故障や事故のリスクが大幅に低減します。また、土間の修理やメンテナンスの必要が少なくなります。これは長期的に見て、運営コストを削減する大きな要素となります。
3つ目に、作業スタッフが働きやすい「作業環境」を整えることが挙げられます。
作業環境は、作業員が日々の業務を遂行する場であり、その環境が整っているかどうかは、作業員のパフォーマンスに直接影響を与えます。不快な環境下では、作業員はストレスを感じやすく、その結果、作業効率が低下する可能性が高いです。一方で快適な作業環境は、作業員のストレスを軽減します。ストレスが少ないと、心地よく作業に集中でき、ミスも減少しやすくなります。
4つ目に、近隣環境への配慮も欠かせません。
地域社会との良好な関係は、工場の運営においても安定感をもたらします。例えば、地域住民からの苦情が少なければ、その分、工場運営に集中できます。また、地域との良好な関係は企業イメージにも寄与し、ビジネスチャンスを広げる可能性があります。
5つ目に、ランニングコストの計算です。ランニングコストを事前に計算しておくことで、未来のコスト増加や予期せぬ支出に備えることができます。これにより、長期的な運営計画が立てやすくなり、資金繰りもスムーズに行えます。
以上のように、工場建設の各ポイントは、生産性向上と密接に関連しています。計画段階からこれらをしっかりと考慮することが、成功への鍵となります。
そのうえで、基本計画を実施するための会社を適切に選定しましょう。工場建設は専門知識とノウハウが必要なため、実績を持つ会社を選ぶことが非常に重要です。なぜなら、工場建設は単なる「建物を建てる」以上の複雑なプロセスであり、多くの専門的な要素が絡むからです。例えば、食品工場では衛生管理や温度管理が必須であり、これらは専門的な知識がないと適切に対応できません。
会社を選択するうえで、建設会社が過去に手掛けたプロジェクトはよく確認しましょう。特に自社の目的に近い実績は非常に参考になります。実績がある会社は、予期せぬトラブルや変更にも柔軟に対応できる可能性が高いです。さらに、長期的なメンテナンスやアフターケアも考慮する必要があり、その点でも実績のある会社が信頼を置けます。
さらに、折衝面における実績も重要なチェックポイントです。工場建設においては、建築基準法はもちろん、行政との調整や各種認証取得など、多角的な視点からの計画と実行が求められます。1級建築士の資格があっても、特定の専門知識がなければ、行政との折衝や設計変更が必要になる場合が多く、これが手間や追加コストになります。そのため、専門的な折衝実績の多い会社を選ぶことが重要です。
このように、工場建設時の会社を選ぶ際は、多角的な観点で実績を確認しましょう。
本記事では、工場建設をゼネコンに依頼する際の注意点や押さえておきたいポイントを解説しました。
建築会社とゼネコンは、業務範囲や規模感の面で異なります。とくにゼネコンは、土木など公共性の高い工事や、大型施設など大規模な工事に適しています。
工場建設の成否は基本計画が握ります。そのため、ゼネコン選びに失敗しないためには、ゼネコンに「基本計画」を丸投げせず、社内の労力やリソースを投入して、しっかりとした基本計画を立てることが不可欠です。その際は、余裕を持った空間の確保など、稼働時の生産性向上を考慮した基本計画を作成し、実績豊富な業者を選びましょう。