クレーンで安全性・効率をアップ!設置する際の注意点 | 工場建設パーフェクトガイド
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クレーンで安全性・効率をアップ!設置する際の注意点
公開日:2024.09.30 更新日:2024.09.27
工場建設においてクレーンの設置は重要であり、重量物の移動を容易にし、作業を安全かつ迅速に進めるために欠かせません。ある工場では、ホイストクレーンの導入により、作業を1人で対応できるようになり、疲労と欠勤者が減少し、工場運営が安定しました。
他の工場では、クレーン操作を無線化することで、安全性が向上しました。従来のケーブル操作による事故リスクが減少し、作業効率が改善され、作業者は安全な場所からクレーンを操作できるようになりました。
ただし、クレーン導入に伴うリスクには、挟まれ事故や落下事故などがあり、適切な訓練や安全装置の点検が重要です。また、自然災害による落下事故を防ぐため、日常的な気象情報の確認や逸走防止装置の設置が必要です。
目次
工場内で使われる主なクレーンの種類
工場建設において、効率的な作業のためにクレーンの設置は欠かせません。クレーンは重量物の移動を容易にし、安全かつ迅速な作業を可能にします。しかし、クレーンには様々な種類があり、それぞれに特徴があります。
◇天井クレーン
天井クレーンは、工場内で最も一般的に使用されるクレーンの一つです。名前の通り、天井に設置されたレール上を移動するタイプで、クレーン本体は天井近くに設置されます。工場の両側の壁に沿ってレールを設置し、そのレールにガーダーと呼ばれる部品を取り付けます。
ガーダーの上をクレーンが水平方向に移動し、重量物を持ち上げたり、運搬したりすることができます。天井クレーンの利点は、下の空間を最大限に活用できる点です。このため、フォークリフトや作業員がクレーン下で自由に作業を行えるため、効率的な動線が確保されます。
また、高い位置に設置されることで、安全面でも優れています。設置には工場の天井の高さや構造が関係するため、計画段階でしっかりとした設計が必要です。
◇橋形クレーン
橋形クレーンは、天井クレーンと並んでよく使用されるタイプで、地上に設置されたレール上を移動します。特徴的なのは、橋のようにガーダーが脚を持ち、地上のレールに沿って水平移動することです。大型の工場や屋外の作業場でよく見られ、非常に大きな荷物や重量物の移動に適しています。
橋形クレーンは、屋内外を問わず設置が可能で、特に建物の構造に依存しないため、建物の強度が不十分な場合や、大規模な設備が必要な際に利用されます。また、クレーンの脚は固定されていないため、移動範囲が広く、作業スペースを効率的に活用することが可能です。
片側の脚を省略して、建物の一部に取り付ける片脚橋形クレーンもあり、用途に応じて柔軟にカスタマイズできます。
◇壁クレーン
壁クレーンは、建物の壁面に設置されるジブクレーンの一種で、天井クレーンや橋形クレーンの補助的役割を果たします。
ジブの先端にクレーンを取り付け、軽量の荷物を効率的に移動させる仕組みとなっており、ジブは通常、旋回することが可能です。可動域を広げることで狭い空間でも柔軟に対応できます。
壁クレーンの利点は、設置が比較的簡単で、床面積を取らない点です。限られたスペースでの作業に適しており、小型工場や作業エリアの狭い場所に設置するのに適しています。
また、クレーンの設置場所や使用目的に応じて、固定式や可動式の選択ができる点も、利用者にとっては大きなメリットです。
クレーン導入で生じるリスク
クレーンは工場建設において重要な役割を果たしますが、同時に導入時にはさまざまなリスクも伴います。これらのリスクを事前に理解し、適切な対策を講じることが安全で効率的な運用に繋がります。
◇事故や災害
クレーンを使用する際に発生するリスクの中で、最も一般的なものが作業中の事故です。特に「挟まれ」や「落下」「墜落」などが代表的な事故例として挙げられます。
挟まれ事故は、クレーンの吊り荷と壁や他の設備の間に作業員が挟まれてしまうケースであり、作業員同士のコミュニケーション不足や安全確認の不徹底が原因となることが多いです。
落下事故はクレーンのフックやワイヤーの破損や、吊り荷の固定が不十分であった場合に発生し、重大な被害を引き起こします。墜落事故はクレーンのガーダ上で作業をしている際に発生することがあり、作業員が高所でバランスを崩して落下するケースが含まれます。
これらの事故は、適切な訓練と作業手順の徹底、安全装置の点検を怠らないことで防ぐことが可能です。
◇自然災害による落下事故の事例
クレーンのリスクは、自然災害による影響も無視できません。特に、台風や突風などの強風が原因でクレーンが落下する事故は、過去にもいくつかの事例が報告されています。
例えば、2003年に茨城県の工場で発生した事故では、突風が原因で屋外に設置されていた複数の天井クレーンがランウェイから外れて走行し、最終的にクレーンが次々と落下する事故が起きました。
この事故では、運転していた作業員がクレーンの落下に巻き込まれて死亡、他の作業員も負傷する大惨事となりました。
このような自然災害による事故は、クレーンの運用中に突然の強風が吹いた場合に特に発生しやすくなります。クレーンは風速の変化に敏感で、適切な風速計測や、強風時にクレーンの運用を中止するなどの対策が不可欠です。
また、クレーンに逸走防止装置を設置し、万が一の風速急増にも備えることが推奨されています。このように、自然災害によるクレーンの落下事故を防ぐには、日常的な気象情報の確認と、迅速な対応が求められます。
クレーン導入はハード面・ソフト面を同時に検討
クレーンを工場建設に導入する際には、設備そのものの設計や構造だけでなく、運用に必要な資格や教育といったソフト面も重要です。これらを同時に考慮することで、クレーンの安全性と効率性を最大限に高めることができます。
◇クレーン設置を踏まえた設計や構造が必要
クレーンを設置する場合、まず工場の建物そのものの条件や強度を確認することが不可欠です。特に天井クレーンの場合、吊り荷の重量が大きいため、クレーンの荷重に耐えられる建物でなければなりません。
設置前には、建物の設計図や構造計算書を確認し、柱や梁の強度がクレーンに適しているかをチェックすることが求められます。また、建物自体が対応できない場合は、独立した鉄骨架台を設置することも検討すべきです。
さらに、クレーン設置に適さない環境も存在します。例えば、天井が低すぎる場合や腐食性の高い環境では、クレーンの運用に適さない場合があります。
天井クレーンは、空間の広さと高さが重要な要素であり、十分なスペースが確保されていないと、安全な操作が難しくなります。したがって、クレーン設置前に建物全体の条件をしっかりと確認することが必要です。
◇操作する従業員は資格または講習が必要
クレーンを安全に操作するためには、適切な資格や教育を受けた従業員が必要です。つり上げ荷重や操作方法に応じて、いくつかの資格が求められます。
・クレーン運転特別教育
つり上げ荷重が5トン未満のクレーンを運転するために必要です。この教育を受けることで、小型クレーンの安全な操作が可能になります。
・床上操作式クレーン運転技能講習
床上操作式クレーンは、運転者が床からクレーンを操作し、吊り荷の移動とともに移動する方式のクレーンです。つり上げ荷重が5トン以上のクレーンを操作する場合に必要です。
・クレーン・デリック運転士免許
つり上げ荷重5トン以上の大型クレーンを運転するために必要です。特に、大型工場や重量物を扱う現場では、この免許を持つ作業員が不可欠です。
クレーン導入で安全性と効率が向上
クレーンを導入することで、従業員の身体的負担を軽減し、作業の効率を大幅に向上させることができます。また、技術の進歩により、無線操作を導入することで安全性もさらに高まっています。
◇従業員の身体的負担を軽減した事例
A社では、組立工場において、これまで従業員が人力で重量物を運搬していました。しかし、作業者の加齢に伴い、腰痛を訴える社員が増え、生産性が低下する問題が発生しました。そこで同社は、ホイストクレーンを導入し、これまで3人で行っていた作業を1人で対応できるようにしました。
ホイストクレーンの導入後、重量物の運搬作業が迅速に行えるようになり、従業員の疲労も減少しました。また、腰痛を訴える社員も減少し、欠勤者が減少したため、安定した工場運営が実現しました。
◇無線化で安全性を向上した事例
B社の事例では、クレーンの操作を無線化することで、安全性が大きく向上しました。従来、作業者はクレーンに付随する操作ケーブルを持ちながら作業エリア内を移動する必要があり、これが転倒や体をぶつけるなどの「ヒヤリハット」の原因になっていました。
無線操作が導入されることで、ケーブルを気にすることなくクレーンを操作できるようになり、作業効率が改善されました。無線化により、クレーン操作の自由度が高まり、作業者は安全な場所から操作を行えるようになりました。
また、無線操作によって作業中に作業エリア内を移動する必要がなくなり、物理的な障害物に引っかかるリスクが低減されました。この結果、事故リスクが減少し、安全性が大幅に向上しました。
工場で使用される主なクレーンには、天井クレーン、橋形クレーン、壁クレーンの3種類があり、それぞれの特性に応じた役割を果たしています。
天井クレーンは、工場の天井に設置されたレールを使って重量物を上下左右に移動させ、作業スペースを最大限に活用できるため、工場内で非常に効率的な作業が可能です。橋形クレーンは地上のレールを使用して移動するタイプで、大型工場や屋外作業現場でよく使用されます。
壁クレーンは、壁面に設置されるジブクレーンで、天井クレーンや橋形クレーンの補完的な役割を果たします。ジブが旋回できるため、限られたスペースでも効率的に使用でき、小型の工場や作業エリアでの使用に適しています。 クレーン導入に伴うリスクとしては、挟まれ事故や落下事故などが挙げられます。これらのリスクを回避するためには、従業員への適切な訓練や作業手順の徹底、またクレーンの定期的な安全装置の点検が不可欠です。
さらに、自然災害によるリスクも無視できません。強風や台風によるクレーンの落下事故を防ぐためには、気象情報の適切な把握と、逸走防止装置の設置などの対策が求められます。