倉庫建設に適した地盤は?調査についても解説 | 工場建設パーフェクトガイド
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倉庫建設に適した地盤は?調査についても解説
公開日:2024.08.26 更新日:2024.08.26
倉庫建設時には建築基準法に基づき地盤調査が義務付けられています。適した地盤条件は、支持層の厚さが3m以上、砂質地盤ではN値30以上、粘土質地盤ではN値20以上です。主な地盤調査方法にはスクリューウエイト貫入試験(SWS試験)とボーリング調査があります。
軟弱地盤では地盤沈下や不同沈下のリスクが高まり、事故や収納力の低下を招く可能性があります。これを防ぐためには、表層改良工法、柱状改良工法、小口径鋼管工法などの地盤改良工事が必要です。地盤調査により予算やスケジュールの精度が向上し、セカンドオピニオンを利用することで過剰な工事を防ぐことが推奨されます。
目次
倉庫建設に適した地盤とは?
建物を建築する際に地盤調査を行うことは、建築基準法により義務付けられています。しかし、どのような地盤であっても、安全な倉庫を建てられるわけではありません。
◇倉庫に求められる地盤条件
倉庫が建築される場所は、海岸近くの埋立地であることが多く、軟弱地盤である可能性があります。軟弱地盤であると、重量物を保管したり、倉庫内で運搬車両を使ったりする倉庫の建築は困難です。
建物を安定して支えることができる地盤を支持層と呼び、支持層の厚さは3m以上であることが望ましいとされています。また、地盤の強さはN値で表され、一般的には砂質地盤であればN値30以上、粘土質地盤であればN値20以上が推奨されます。
◇主な地盤調査の種類
地盤調査とは地盤の強さを調べるもので、主な種類は以下のふたつです。
・スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)
鉄の棒に取り付けたスクリューポイントを地中に貫入させることで、地盤の強度を測定します。おもりの重さと回転回数から地盤の強度を評価します。費用の目安は約8万円、調査期間は数時間です。主に、一戸建て住宅で採用されています。
・ボーリング調査(標準貫入試験)
地面に穴を開け、サンプラーを挿入してハンマーで打撃を加え、地盤の強度を測定します。マンションや地下がある建物の調査に適しており、信頼性の高いデータが得られる方法です。費用の目安は20万円〜30万円で、調査期間は2~3日です。
地盤が弱い土地に起こりえる被害
地盤の弱い土地に倉庫を建設すると、事故の発生リスクが高まり、収納力が低下して工場の生産・出荷能力にも影響が及ぶ可能性があります。こちらでは、工業系倉庫、食品系倉庫の事例をご紹介いたします。
◇地盤沈下による空洞化
地盤沈下が起こると空洞ができ、その後、降雨や地下水の上昇によって徐々に空洞が広がります。
ある工業系倉庫では、見た目には異常がないように見えていたものの、床下には既に空洞が発生していました。それに気づかず運営を続けていたところ、突然コンクリート床が沈下し、プレス機械が倒れました。
たまたまそこにいた従業員が、プレス機械の下敷きになり負傷した事故が発生しています。
◇不同沈下による傾き
不同沈下とは、建物が特定の方向に斜めに傾く状態を指します。
関東北部の食品系の倉庫は、もともと水田だった区域を埋め立てて建てられました。地盤が弱く、その影響で倉庫の床面が沈下し始めました。床面全体が均一に沈下していたわけではなく、壁際から5mほどの範囲のみが急傾斜になっていました。
この不同沈下により、荷物を積むと片寄った荷重がかかり、段ボールが潰れて変形して瓶が割れる危険がありました。その結果、倉庫の周囲5mの範囲が使用禁止となり、中央部分しか利用できない状態に陥り、収納力は半減し工場の生産・出荷能力にも悪影響が及びました。
軟弱地盤に倉庫を建設する方法
軟弱地盤に倉庫を建設する際は、地盤改良工事が必要です。地盤改良工事の主な種類には、表層改良工法、柱状改良工法、小口径鋼管工法があります。それぞれが異なるため、事前に確認し適切な方法を選ぶことが重要です。
◇地盤改良工事
主な地盤改良工事の種類は、次の3つです。
・表層改良工法
構造物建設部分の表層にある軟弱地盤部分を掘削してから、セメント系固化材を使って、原地盤の土と混合・攪拌した後に転圧して、十分に締固めます。軟弱だと想定される地盤が、地表から2m以下の浅い位置にある際に適した工法です。
支持力を増加し均等化をすることで、不同沈下を防止する強固な地盤に改良できます。
・柱状改良工法
深さ2m以上の地盤を改良する場合などに用いられる工法です。建物の基礎形式に併せて、コンクリートで作った柱状の改良体を設置していきます。
地盤の強度が高い層に到達するまで改良体を打ち込む方法もありますが、一般的には4~6mの長さの柱を打ち込み、地盤との摩擦力で建物の安定性を確保します。
・小口径鋼管工法
堅固な支持層まで、小口径の鋼管を杭状に貫入させることにより、建設物を支えます。軟弱な地盤が厚く、支持層が深いため、表層改良工法や柱状改良工法では建物を支えられない場合に採用される工法です。
また、セメント系固化材では固化に不安がある土質が堆積している地盤にも適しています。
◇地盤改良工事の費用目安
地盤改良工事の費用は、選択する工事の種類によって異なります。費用相場は、表層改良工法が最も安く、1坪あたり1~3万円です。次いで、柱状改良工法が1坪あたり3~5万円、小口径鋼管工法が1坪あたり5~7万円となります。
地盤調査で倉庫建設計画がスムーズ化
安全性の高い倉庫を建てるためには、地盤調査が必要不可欠ですが、地盤調査を行うことで予算やスケジュールの精度も向上します。
地盤改良工事が本当に必要かどうかの判断は各業者によるものであり、それを悪用して必要以上の工事を勧められるトラブルも生じています。過剰な工事を防ぐためには、セカンドオピニオンの利用が有効です。
◇予算やスケジュールの精度が向上
地盤調査を行わずに軟弱な地盤の地域に倉庫を建設すると、地盤沈下や建物に傾きが生じるリスクが高まります。これらの危険を避けるためには、工事前に構造計算を実施し、建物の構造耐力を計算する必要があり、そのためには地盤調査が必要不可欠です。
建物のプランと最適な構造設計は地盤調査の結果をもとに検討していくため、地盤調査を行うことで倉庫建設の予算やスケジュールの精度も向上するメリットがあります。
◇不安な場合はセカンドオピニオンも検討
地盤調査の判断基準は、過去の判例や近隣データ、地盤の特性など総合的な要素によりますが、最終的に地盤改良工事が必要かどうかの判断は、各業者に委ねられます。そのため、一部の業者は、必要以上に工事を推奨することがありました。
このような過剰な工事を防ぐためには、セカンドオピニオンのサービスが有効です。地盤調査の結果に納得できなかったり不安を感じたりする場合は、セカンドオピニオンを検討することをおすすめします。
倉庫建設においては、建築基準法に基づいて地盤調査が必須とされています。しかし、どのような地盤でも安全な倉庫が建てられるわけではなく、特に適切な地盤条件を満たすことが重要です。
理想的な地盤条件としては、支持層の厚さが3m以上であることが求められ、さらに、砂質地盤であればN値が30以上、粘土質地盤であればN値が20以上であることが推奨されます。これらの条件を満たすことで、倉庫が重量物を支え、長期間にわたり安定して機能することが可能となります。
地盤調査には主にスクリューウエイト貫入試験(SWS試験)とボーリング調査が使用されます。SWS試験は、比較的短時間で地盤の強度を測定できるため、一戸建て住宅などの調査に適しています。一方、ボーリング調査は、より深い地盤の強度を詳細に測定でき、マンションや地下を含む構造物の建設に適しています。
しかし、軟弱な地盤に倉庫を建設する場合、地盤沈下や不同沈下といった問題が発生するリスクが高まります。これにより、建物が不均一に沈下し、倉庫内の収納力が低下するだけでなく、工場の生産や出荷能力にも大きな影響を及ぼすことがあります。例えば、地盤沈下によって床下に空洞ができ、その結果、機械が倒れるといった事故も報告されています。
こうしたリスクを回避するためには、地盤改良工事が不可欠です。地盤改良工事には、表層改良工法、柱状改良工法、小口径鋼管工法の3つの主要な方法があります。
表層改良工法は、浅い地盤を強化するために適しており、支持力の増加と均等化を図れます。柱状改良工法は、より深い地盤を強化するための方法で、建物の安定性を高めるために用いられます。さらに、小口径鋼管工法は、特に堅固な支持層まで鋼管を挿入し、建物を安定させるために使用されます。
また、地盤調査を行うことで、倉庫建設の予算やスケジュールの精度が向上し、計画をスムーズに進めることが可能になります。地盤改良工事が本当に必要かどうかの判断は各業者によりますが、過剰な工事を防ぐためには、セカンドオピニオンの活用が有効です。こうした対策により、過剰な工事のリスクを減らし、最適な建設計画を実現することができます。